詐害行為
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第2編 行為類型別第1章 財産減少行為1012 転得者に対する請求第2 検討すべき要件・行使方法(注2) これに対し,抵当権設定行為自体も詐害行為取消権の行使によって,その効力を否定できる場合(転得者に対する424条の5の要件を満たす場合)には,抵当権者に対しては424条の5に基づく取消訴訟を提起し(請求の趣旨は,債務者・受益者間の不動産譲渡行為の取消しと共に,受益者への所有権移転登記の抹消登記申請につき,不動産登記法68条に基づく抵当権者の承諾を求めるものとなる。),所有権登記名義を有する受益者に対しては,424条に基づき取消しと共に所有権移転登記の抹消を求めることが考えられる。そして,ここまで考えるならば,抵当権者に対しては424条の5に基づき,債務者・受益者間の不動産譲渡行為の取消しと共に抵当権登記の抹消を求める詐害行為取消訴訟を提起し,所有権登記名義を有する受益者に対しては,424条に基づき取消しと共に債務者への所有権移転登記を求める詐害行為取消訴訟を提起することも認められてよいであろう。受益者に対する取消権行使の要件は認められるが,転得者である抵当権者に対する詐害行為取消しの要件が認められるか否かが危惧されるようなケースでは,こちらの方法の方が少なくとも所有権移転登記の回復自体は可能となるという点において,より慎重な選択になると解される。が付着したままでも所有権登記の回復を求めたいような場合が想定される。(注2) 一方,当該不動産がさらに転得者に譲渡され,受益者に所有権登記名義が存在していないケースでは,取消しと共に価額償還請求を求めることになる(民424条の6第1項後段)。この場合には,取消債権者は直接,自己に代償金を支払うように請求しうることとなり(民424条の9第2項),直接請求型の権利行使方法となる。 取消債権者が転得者に対しその取消しを求める場合には424条の5に基づく請求となる。受益者から転得者に既に不動産が譲渡され,所有権登記名義も転得者となっているような場合に,その所有権登記を受益者の下に移転するように求めるようなケースが想定される(民424条の6第2項)。なお,転得者に対する取消請求においても,現物返還,すなわち不動産譲渡行為であれば,その登記名義の債務者への回復が困難であるときは,取消債権者は価額償還を求めることができ(民424条の6第2項後段),この場合は424条の9第2項により直接請求型の権利行使方法となる。

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