詐害行為
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第2編 行為類型別第1章 財産減少行為105抗弁1受益者が行為当時,詐害の事実について善意であること(民424条1項ただし書)抗弁2取消債権者の債権が強制執行により実現できないものであること(自然債務や不執行の合意のある責任なき債務である場合。民424条4項)8 Aは,上記贈与の際,これによって債権者を害することを知っていた。9 被告は,上記売買の際,上記贈与によって債権者を害することを知っていた。10 よって,原告は,被告に対し,詐害行為取消権に基づき,本件土地につき,上記贈与の取消しと真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をすることを求める。※ 受益者から取得した者に対する詐害行為取消しであるので,424条の5第1号の要件を備える必要がある。そこで,受益者に対する詐害行為取消請求をする場合の請求原因事実に加え,①債務者から受益者に移転した財産(逸出財産)を転得者が受益者から取得したこと,②転得者が,上記①の取得時に,債務者のした行為が債権者を害することを知っていたこと(転得者の悪意)の事実が必要となる。⑷ 抗 弁※ 424条の5が独自に規定するのは,転得者及び中間転得者の悪意のみであり,その余の要件は,「受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合」と規定する。そうであれば,受益者の主観的要件の取扱いについて424条はこれを抗弁と捉える以上,被告となる転得者が受益者の善意を主張立証すべきことになると解すべきである。この点について,第1編第2章第4節第3の2を参照されたい。3 中間転得者から取得した場合第3 要件事実的理解と訴状記載例 一般的に想定される抗弁事由については,受益者に対する詐害行為取消訴訟と同様であり,以下のものとなる。 424条の5に基づき転得者に対して詐害行為取消訴訟を提起する場合,被告となる転得者が受益者から逸出財産を取得したものではなく,他の転得者から転得するケースも想定される。被告となる転得者と受益者との間に存在する全ての転得者を中間転得者と呼ぶ。 以下のような例を想定する。なお,訴訟物,請求の趣旨は上記2において検討した内容と同様であるので,ここでは請求原因事実及び抗弁事実のみを

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