詐害行為
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iはしがき 本書は,詐害行為取消訴訟に特化した解説書である。この分野における実務家による解説書としては,故飯原一乘判事の書籍があるものの,実務の手引きとなる書籍は意外と少ない。 それでは,詐害行為取消権が実務では重要視されていないのかというと,決してそのようなことはない。企業活動において,一定の取引行為に関する詐害行為該当性の判断は日常的に必要とされている。とりわけ経済的苦境にある企業にとっては,倒産回避のための抜本的な対策が求められるが,それが詐害行為と評価されるか否かは決定的なポイントとなる。一方でこれらの企業に融資し,取引上の債権を有する債権者にとっては,倒産手続に至る前の段階において,債務者の行動をチェック,抑止し,仮に看過しがたい行為がなされようとする場合にはこれを断念させる,その唯一の法的手段が詐害行為取消権である。取引実務において詐害行為取消権は重要な役割を担っているのであり,筆者も多くの企業経営者及び法務担当者から,一定の行為が詐害行為に該当するか否かの相談を受けている。そもそもが法文化を異にする世界中の国々の民法においても,詐害行為取消権制度が存在しているという事実自体が,この権利の重要性を物語っているといってもよい。 つまり,詐害行為取消権が現実の訴訟に発展することは多くはないとしても,この権利が果たしている実務上の役割は大きいと言うべきである。債務者の一定の行為が詐害行為となるか否か(詐害行為取消権の成立要件),その場合にどのような扱いとなるか(詐害行為取消権の効果),また,仮に詐害行為取消訴訟を提起する場合にはどのような方法をとればよいのか(詐害行為取消権の行使方法)のそれぞれについて,網羅的に記載した一冊のコンパクトな書籍が存在すれば,企業法務に関わる弁護士,企業法務担当者らにとって有益になると考えた。 さらには,詐害行為取消訴訟が意外と多くはないという認識についても,改めてその意味を考えてみる必要がある。筆者のところには,近時,詐害行はしがき

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