詐害行為
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第2編 行為類型別第1章 財産減少行為107抗弁1受益者が行為当時,詐害の事実について善意であること(民424条1項ただし書)抗弁2取消債権者の債権が強制執行により実現できないものであること(自然債務や不執行の合意のある責任なき債務である場合。民424条4項)⑵ 抗 弁 一般的に想定される抗弁事由については,受益者に対する詐害行為取消訴訟と同様であり,以下のものとなる。 債務者と受益者間の所有権移転登記手続が「贈与」を原因としてなされている場合には,詐害行為の立証は比較的容易と解される。問題は,「売買」を原因としている場合である。この場合,時価相当額での売買であれば財産減少行為としての424条ではなく,424条の2の適用の問題となる。したがって,債務者と受益者間の間で合意された売買代金額(時価相当額との乖離の有無)が重要となるが,債権者が売買代金額を訴訟提起前に把握することは困難である。 そこで,あくまで事案次第ではあるが,債務者が所有していた不動産について,「売買」を原因とする所有権移転登記手続がなされ,債務者が無資力状態となった場合には,まずは売買契約の不存在(登記はなされているものの売買合意がなされていない。)あるいは民法94条1項の通謀虚偽表示(売買合意が第4 立証のポイント,具体的な立証手段※ 中間転得者から取得した転得者に対する詐害行為取消しであるので,424条の5第2号に定める要件を満たす必要がある。具体的には,①債務者から受益者に移転した財産(逸出財産)を転得者が中間転得者(受益者と転得者の中間に存在する全ての転得者)から取得したこと,②上記①の中間転得者の全ての者が,それぞれ転得の当時に債務者のした行為が債権者を害することを知っていたこと,③転得者が,上記①の行為時に,債務者のした行為が債権者を害することを知っていたこと(転得者の悪意)の事実が必要となる。※ 上記2⑷の※に記載したように受益者の主観的要件の取扱いについて424条はこれを抗弁と捉える以上,被告となる転得者が受益者の善意を主張立証すべきことになると解すべきである。第4 立証のポイント,具体的な立証手段

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