詐害行為
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vはしがき 最後に本書の刊行にあたっては,日本加除出版株式会社の編集者である佐伯寧紀氏と,既に同社を退社されている小室裕太郎氏に大変,お世話になった。小室氏からは,これまでに全く例のない詐害行為取消訴訟のみの網羅的,専門的な実務解説書を刊行することの意義を篤く語っていただき,そのためには筆者による単著であることが何よりも重要であると力説いただいた。私に博士論文執筆後,休む間もなく本書の執筆を決意させたのは,小室氏の情熱のなせるところである。そして,佐伯氏には執筆当初から担当編集者としてコンビを組んでもらった。私が本書の執筆を最後まで続けることができたのは,佐伯氏との間で何度も行った編集会議のおかげである。ご両者に感謝申し上げると共に,本書がお二人の期待に沿うものとなったことを願うのみである。 詐害行為取消権の難解さは,この権利が債権の本質に深く関わるものであること,民法上の権利でありながら訴訟法や執行法の知識,理解をも必要とすること,条文が僅か3箇条であり判例法理の精査が求められることにある。このうち条文が僅かという点は改正債権法により是正され,多くの判例法理が明文化されたが,今度は改正法による新たな規律がこの権利の難解さを増長させる結果となっている。 多くの企業法務担当者が詐害行為性の判断に迷い,また多くの弁護士が詐害行為取消訴訟の提起に躊躇するというのも言わずもがなである。そのような状況を少しでも是正するために,本書を役立てていただきたい。そして,本書を利用することにより詐害行為取消権の実務に関わる多くの関係者の方々が,その職務遂行を容易にすることができれば何よりである。 2021年10月弁護士・博士(法学)・法政大学教授 高 須 順 一

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