6 第1部 総 説⑵ 法律による所有者不明土地の定義付け 民法・不動産登記法の改正以外に所有者不明土地問題対策として制定・改正された法律の中には,上記の「とりまとめ」や「諮問」とは異なる独自の定義規定を設けているものがある。これは,各法律に固有の立法目的や適用領域(守備範囲)があり,それに適合するよう「所有者不明土地」の概念を規定する必要があることによる。具体的には次のとおりである。ア 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律イ 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元第49号) この法律における「所有者不明土地」とは,相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいうとされており(特措法第2条第1項,下線筆者),不動産登記簿の記録からは判明しないということのみで直ちに所有者不明土地として取り扱うことはできない規定になっている。また,同条第2項ではこの法律特有の「特定所有者不明土地」について定義付けを行っている。これは,土地収用法よりも簡易な手続で収用や土地使用権設定が可能となる土地の要件を定めたものであり,所有者不明土地のうち,現に物置その他の簡易建築物以外の建築物が存せず,かつ,業務の用その他の特別の用途に供されていない土地を特定所有者不明土地としている。その趣旨は,都道府県知事による裁定の前提として必要な不動産価格の算定が容易な土地に限るということである(国土交通省土地・建設産業局企画課「所有者不明土地問題への対応策について」月報司法書士2020年1月号8頁)。このように,同法は所有者不明土地の収用や使用権設定という非常に強力な措置に関する規定を含んでいるため,公権力行使の謙抑性の見地から,所有者不明土地の概念に限定を加えたものと解される。年法律第15号) この法律はいわゆる変則型登記(Q3参照)の解消を主要な目的として制定されたものであるため,「表題部所有者不明土地」という独自の
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