第1部 新しい時代の公用文のルール 神奈川県,埼玉県,北海道が口火を切って,公用文改革運動が起こったのは1970年代である。1)キャッチフレーズは「言葉の行革」で,この運動は多くの県に次々と波及し,各地で取り組みが実施されていた。以下の記述や実例は,1970・80年代の動きをまとめて概観した記事(朝日新聞の1990年07月17日朝刊)を基にしている。 記事によると,難解な行政用語に加えて,公務員ですら理解しにくい造語やカタカナ語が増えてきたこと,首長たちの政治姿勢の変化などがこの運動の背景にあるという。首長たちの政治姿勢は,当時,一方通行型の政治からわかりやすく情報を発信して対話する政治へと変化していた。 福井県と熊本県は,1980年代に次のような言い換え例を作成していた。問題があるとして検討されていたものは,やはり単語レベル(または句レベル)であった。 言い換え例 遺憾である →残念である 可及的速やかに →できるだけ速く 思料する →考える,思う 別途~する →改めて~します 了知 →了解,理解 遺漏のないよう →適切に,漏れや落ちのないように ご査収 →お確かめのうえお受け取りください 採納する →受け入れる 承引 →承諾,引き受け 返戻(れい)する→返す 言い換え例以外には,意味不明であるからという理由で「善処する,何分の,前向きに検討」などの禁止案が提示されている。8言葉の行革(1970・80年代)
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