12章 難解さの犯人探し:単語⇒文⇒文章構造 文章Aは一目瞭然で一文が長い。文章Bが句点([。]のこと)を5つ打っているのに対し,文章Aには句点が1つしかない。読点([,]のこと)で文章をつないでいくと,着地点がなかなか来ないため,読み手に負担がかかることになる。これは連体修飾とも関係するが,修飾する言葉が多ければ多いほど一文は長くなる。そして,一文が長いと文章は読みにくくなる。 イギリスで普及している〈やさしい英語〉ガイドラインでは,一文に入れる単語の数として15語から20語くらいを目安にするようにとなっている。1)日本語に当てはめてみると,「形態素解析という単語は,しっかりと定義を加えて使えば読み手には伝わる。」が20語程度である。一文の長さの目安を知るには参考になるであろう。厳密には一文中の名詞の数を数えれば,言葉の詰まり具合(密度)が測れるため,すべての語を数える必要はない。2)一文当たりの平均名詞数を測るウェブサイトが公開されている(17章「やさにちチェッカー シンプル検査版」参照)。そこでは,名詞数が6以内だと読みやすい文章として判定される。つまり,名詞数を6以内に抑えれば,文章もちょうど読みやすい長さに収まることになる。 ときに,本筋から外れた内容が含まれているから一文が長いということもある。文章Aのように日本語研究の展開,ツール開発者への感謝,といった趣旨の違うものをくっつけてしまうと流れが悪くなり読みづらくなる。 文章Aの中にある「技術の進歩」,「新段階への突入」といった名詞中心の言葉は,「技術が進んだ」,「新しい段階に入った」と動詞や形容詞を使っても表現ができる。動詞・形容詞のような用言を名詞に変換することを名詞化と呼ぶ。名詞化によって,一文の言葉の密度が高くなったり,一文の長さが伸びることで文章は硬く難解になる。57一文の長さを考慮する名詞化はなるべく控える
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