★ 一人で相談に来られる高齢者は、家族との関係で悩んでいる可能性がある。★ 多少の不満があっても、推定相続人に対して不用意な言動をしないことは親の責任でもある。解 説相談者と長女が約50年間も一緒に暮らしているなら互いに気心も知れていますし、毎日の生活は安定しているはずです。しかし、加齢により、現在の関係はやがて壊れる運命にあります。相談者の死後一人で暮らすことになる長女のことを考えれば、問題の先送りをせず、今のうちに何らかの手を打っておくべきです。相談例2独身の子と2人で暮らす高齢者の相談相談者(81歳女性)から、「20年前に夫が他界した後、ずっと独身・無職の長女(54歳)と2人で暮らしている。今のところ、何とか生活しているが、これから先に備えて何をどうしておけばよいのか」と相談された。対応のポイント1 8050問題「親一人・子一人」と聞けば、親と幼い子が肩を寄せ合って慎ましく生活している世帯を想像します。しかし、子が中高年ともなれば、なぜ子は自立していないのだと眉を顰められるかもしれません。「8050問題」とは、若い頃からの子のひきこもりが常態化し、50台の子と80台の親が同居している場合のことで、最近は、孤立死、無理心中、親の死体遺棄、親の年金・生活保護費の不正受給などの原因として捉えられています。ちなみに、平成30年度の内閣府調査によれば、中高年(40歳〜64歳)のひきこもりは約60万人で、そのほとんどが高齢の親との同居と考えられます。そうすると、高齢者と子の同居世帯(約1,000万世帯)のうち6%程度(60万世帯)がこの問題を抱えているのです。また、「8050問題」はそのまま高齢化し、やがて「9060問題」に移行すると危惧されています。多くの場合、8050問題やひきこもりの背景には、精神疾患や事故の後遺症など、そうならざるを得ない深刻な事情が存在します。しかし、根本的な解決としては、子の就労(又はそれに代わる社会参加)による自立しかありません。相談者の死後に長相談例2 独身の子と2人で暮らす高齢者の相談35
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