終法
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はじめに(本書の目的)本書を手に取っていただいたことに、まず感謝します。本書は、大阪弁護士会で行ってきた新規登録弁護士研修等の内容をもとに、登録後間もない若手弁護士を対象として、終活・遺言・相続など高齢者に関する問題について法律相談を担当する場合の心構えやヒントをまとめたものです。ご承知のように、わが国では、急激な高齢化とともに、高齢者を対象とする多様なビジネスが活性化し、高齢者をめぐる様々な問題がクローズアップされています。そして、相続等に関しては平成30年、令和3年と立て続けに法改正がありました。また、令和2年春に突如襲来した新型コロナウイルス感染症は未だに終息せず、高齢者の孤立に拍車をかける一方で、高齢者や相続をめぐる分野への関心も高まっています。これに対して、弁護士は日常の法律相談で高齢者やその家族(以下、あわせて「高齢者家族」といいます)から様々な相談を受けていますが、若い弁護士は、高齢者との同居、介護、葬儀などの実体験に乏しく、高齢者家族の不安や心情についての理解が十分ではありません。また、相続分野は司法試験では軽視されるため、相続法を勉強する機会も不足しがちです。もちろん後見、信託、遺言、相続、改正法などについては多くの優れた専門書が出版されていますが、高齢者家族は、法律の分類にしたがって悩むわけではありません。ですから、弁護士は、分野ごとの法律知識だけではなく、高齢者家族を取り巻く環境や立場をよく理解したうえで、当事者の機微を弁え、適切なアドバイスを差し上げていただきたい、そして、それができれば、弁護士に対する需要喚起にも寄与できるかもしれません。このように考えて、今回、本書を上梓させていただきました。なお、本書の特徴は、以下のとおりです。1 本書は、表題のとおり、高齢者家族からの法律相談に臨む際のノウハウについて説明するものです。そこで、第1編ではイメージを共有していただくために法律相談の具体例を挙げ、あわせて、法律相談における会話の工夫について説明しました。高齢者やその家族がかかえる不安を理解し、共鳴し、相談内容を予測し、接遇やマナーを身につける機会となれば幸いです。2 第2編では、遺言や相続の前段階となる終活(介護、後見、財産管理や相続税対策はじめに(本書の目的)i

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