6められていくことになろう。その意味で,外国人の我が国での滞在の有り様を在留資格のみによって規定することには限界があり,入管法制は外国人法制の一部に過ぎなくなるということもできる。しかしながら,日本人の子として出生すれば直ちに日本人としての権利能力を享受することができるのに比して,外国人は事実として本邦に足を踏み入れれば直ちに在留する外国人としての地位を獲得するものではない。入管法制は,外国人が我が国において適法に滞在し活動することができるための基盤としての役割を有するのであり,その基盤の上で各分野における活動可能性が展開するという仕組みに変わりはないのである。 このように,入管法制は,多岐にわたる複雑な法制であり,加えて,社会や経済の変化,さらには国内外の状況の変化に応じて常に変化している法制である。 そこで,本書では,逐条解説及び在留資格の詳細な解説を試みるとともに,入管法制が時代の要求に応じてどのように変化してきたかを知ることができるよう過去の主要な改正についても触れることとした。そして,過去の改正の背景や趣旨等を実証的に明らかにするため,国会での法律改正にかかる政府答弁,公表されている政府資料等を可能な限り引用することとした。 また,入管法制,とりわけ,その中核をなす在留資格制度に関しては,上陸許可の基準を定める省令を始めとして重要な内容を有する政省令や告示などが数多く定められており,入管法制の全体像を明らかにするためには,これらの法令についても触れることが必要であることから,本書では,関係する政省令や告示についても可能な限りの解説を試みた。 さらに,入管法制に関しては,多くの判例が存在すること,しかも,前述した上陸特別許可及び在留特別許可を始めとして法務大臣の裁量的判断に委ねられている場面も多いことから,主要な判例の要旨等も可能な限り掲載することとした。初版 はしがき
元のページ ../index.html#10