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4るが,一方で,法務大臣が,個々の外国人に係る事情等を考慮して,「退去強制事由には該当するが退去強制は行わないで在留を特別に許可する」という特例的仕組みが定められている。 また,上陸手続に関しては,実体的要件を明確化する改正が行われてきたが,ここでも法律レベルですべてを定めることには限界があり,重要な内容を有する法務省令や法務省告示などが多数定められ,上陸許可の要件は相当複雑なものとなっている。しかし,それでもなお,人の活動や事情は千差万別であり常に例外があり得る。そこで,上陸手続においても,法務大臣が上陸のための条件に適合しない場合でも裁量により上陸を認め得る上陸特別許可という特例的な仕組みが設けられている。 このように,入管法は,手続を重視し,利害関係者の意見聴取の機会を十分に確保するとともに,各段階の手続を異なる特別な官職を占める者に委ねることにより,その公正性を担保しようとするという特殊な法体系を構成しているとともに,上陸を中心に実体的要件が詳細に定められたが,その一方で,当該要件に適合しない場合にも裁量により上陸や在留を許可できるという独特の仕組みを設けている。 このほか,入管法には,難民認定手続や在留資格の取消手続などが定められている。これらの手続は入管法の制定当初からのものではなく,難民の認定手続は,我が国の難民条約への加入に伴って入管法に加えられた。難民の認定手続においても,難民の認定の権限は法務大臣に属するが,入管法は,事実の調査等を行う特別な官職として難民調査官を定め,法務大臣は,難民調査官として指定した入国審査官に事実の調査を行わせることができることとしている。また,平成16年の改正で新設され,後述する「中長期在留者」制度の導入に伴い整備がなされた在留資格の取消手続においても意見聴取の手続が定められ,法務大臣は在留資格の取消しをしようとするときは,その指定する入国審査官(難民の認定を受けた者の在留資格の取消しの場合は難民調査官)初版 はしがき

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