競業避止
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2 小 括Commentary解説 1 損害賠償を認めた裁判例 裁判例上,具体的にどのような場合に忠実義務・誠実義務違反が認められているか。第1節 在職中・在任中の競業避止義務 ╱ Q59るような態様で侵害してはならないという雇用契約上の付随義務ないし信義則上の義務を負い,競業避止義務を負うというべきところ,被用中に競業取引を行って使用者の正当な利益を害した場合は,雇用契約上の付随義務ないし信義則上の義務違反として,民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。」と判示している。 以上の通り,裁判例は,特段,就業規則の定めや誓約書等がなくとも,在職中の競業避止義務を認めている点に注意が必要である。 そのため,後述する通り,退職後の競業避止義務違反が認められにくいのに対して,在職中の競業避止義務違反は認められやすい。 退職後に競業避止義務違反を行っている労働者は,在職中から競業行為を行っている場合が少なくないので,使用者とすれば,退職後の行為だけにとらわれず,在職中の行為に問題がないかどうかを慎重に検討すべきである。     顧客や従業員を奪い取ったりして使用者に重大な損害を与えていAる場合に,損害賠償が認められると考えられる。⑴ エープライ事件(東京地判平15・4・25労判853号22頁) 「使用者の利益のために活動する義務がある被用者が,自己又は競業会社の利益を図る目的で,職務上知り得た使用者が顧客に提示した販売価格を競業会社に伝えるとともに,競業会社を顧客に紹介したり,競業05

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