競業避止
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第1章 競業避止義務 積極的な働きかけを行っていたかどうかがポイントになる。12容師に顧客がつくという性格があり,理美容師が退職後にその勤務場所を顧客に知らせ,その顧客の意向によって,当該従業員の次の勤務先で理美容を受けるようになることも珍しいことではなく,これによれば,理美容師があらかじめ連絡先を聞くなどしていた顧客らに対し,もとの勤務先を退職した後に,新たな勤務先である美容室の連絡先を教えたとしても,それが顧客の意向により,その依頼に基づいて行った場合には,これが顧客の大がかりな簒奪等にわたるような,前使用者に重大な損害を与える態様でされたものでない限り,損害賠償義務を負わないものというべきである。」⑶ 東京地判平19・4・27労判940号25頁 元代表取締役(Y1)が在任中に行った行為について違法と認め,共謀行為を行った労働者についても違法と判断している一方,積極的に勧誘行為を行っていない労働者(Y7)については,次のように判示して,損害賠償を認めていないことが特徴的である。 「同一顧客企業に派遣されていた原告従業員らに対し被告Y1らの解任についての対応に関する電子メールを送信したこと,その数日後,Uに対し,被告Y1らの解任により派遣先との契約も終了させられ,今のまま稼働できなくなるのではないかと思われると述べたこと,平成17年1月13日ころには従業員に対し辞表提出時期等に関する連絡をしていたこと,同月上旬ころUに対し,新会社に行くかどうかを尋ねるなどしたこと,また,同年2月23日ころ,Uに対し原告に辞表を提出する方法の指導等をしたこと,結局,同じ企業に派遣されていた者のうち,Iは原告を辞職し被告会社に就職したことなどが認められるものの,被告Y7は,取引先との契約打ち切りを断定したわけではなく,取引打切りの可能性という自らの見通しを述べたにすぎない以上,ことさら虚言を述べて勧誘したということはできないし,その他の同被告の関与も積極的なものということはできない」

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