競業避止
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第1章 競業避止義務 前記2⑵オにて記載した①〜④に該当しない限り,懲戒処分や解雇は難しいと考えられる。本件においては,「①労務提供上の支障がある」と判断されたものであるが,一般論として①〜④の該当性を判断するにあたっては,労働者に誠実義務違反行為があるかどうかも考慮されるものと思われる。16 「私企業の労働者は一般的には兼業は禁止されておらず,その制限禁止は就業規則等の具体的定めによることになるが,労働者は労働契約を通じて1日のうち一定の限られた時間のみ,労務に服するのを原則とし,就業時間外は本来労働者の自由であることからして,就業規則で兼業を全面的に禁止することは,特別な場合を除き,合理性を欠く。しかしながら,労働者がその自由なる時間を精神的肉体的疲労回復のため適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労働提供のための基礎的条件をなすものであるから,使用者としても労働者の自由な時間の利用について関心を持たざるをえず,また,兼業の内容によつては企業の経営秩序を害し,または企業の対外的信用,体面が傷つけられる場合もありうるので,従業員の兼業の許否について,労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえでの会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたく」 「債務者の就業時間とは重複してはいないものの,軽労働とはいえ毎日の勤務時間は6時間に互りかつ深夜に及ぶものであつて,単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり,したがつて当該兼業が債務者への労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす蓋然性が高いものとみるのが社会一般の通念」として解雇を認めた。⑵ マンナ運輸事件(京都地判平24・7・13労判1058号21頁) 使用者が兼業不許可にした行為を不法行為と認定した。 「被告における原告の担当業務は,大型トラックの運転であり,適切な休息時間が確保できないまま被告における業務に従事した場合には,疲労や寝不足のために交通事故等を起こし,被告の業務に重大な支障が判  断  

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