地目
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はしがき 「たかが地目」と書けば,「この筆者は何を考えているのか。」と訝しむ向きもあると思うが,いつも筆者が感じている思いである。所有権移転登記の可否に直接影響のある田,畑は別として,地目が宅地であれ,雑種地であれ,山林であれ,何であれ,権利に関する登記実務には影響はない。また,地目の中には,その沿革からか,いかにも古めかしいものや,具体的にどのような現況なのかわかりにくいもの,用語として現代の社会に適合しているのかよくわからないものなどがあると感じている。地目が歴史の中で果たしてきた役割(租税に関することも含めて)は理解しつつも(筆界を特定するに当たり,地目の境が参考になることもあった。),今日において,登記上の地目はどのような役割を果たしているのか,また,果たすべきなのか。それを,考える時が来ているのかもしれない。とはいえ,現行の不動産登記において,土地を特定するための重要な要素として地目が定められ,社会に概ね定着している以上,「地目」を正確に理解し,個々の土地に適用していくことは不動産に関する権利の明確化にとって必要とされることであり,表示に関する登記の実務においては欠かせないことであろう。 「されど地目」,である。不動産登記の地目は土地の用途による分類の種別をいうが,その種別も含み,さらに広く,個々の土地が有し,帯びる,性質や経緯,位置,地域などの属性,特性等も「地目」と捉えれば,不動産登記法にとどまらず,土地法制の全体像の理解を助けることにもなり,極めて有益なことではないだろうか。 そこで,本書は,まず,不動産登記の地目について第1編で解説したうえで,さらに,地目というキーワードを広く土地法制との関連で考えた。私的自治,所有権絶対の原則と公共の福祉等との関係で,土地の属性,特性等ごとに,個々の土地がどのような規制を受けるのか。例えば,「宅地」一つとっても,各法令によって定義や規制が異なり,土地の属性,特性等ごとに種々の法令の規制を受けることに留意する必要があり,不動産登記の地目とは直接の関係がないとはいえ,登記上の地目も土地の特性等を把握するためvはしがき

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