離契
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150第1 年金分割ては,忘れずに実施すべき制度といえます。年金分割には,合意分割と3号分割の2種類が存在します。3号分割は,夫婦間の合意がなく手続を行うことができる点がメリットですが,①婚姻期間のうち,平成20年(2008年)4月1日以降の特定期間が対象となること,②国民年金第3号被保険者(厚生年金保険の被保険者又は共済組合の組合員の被扶養配偶者で,20歳以上60歳未満の者)である期間についてのみ分割が可能であることに注意が必要です。したがって,婚姻期間が平成20年3月31日以前にも存在する場合や,婚姻期間中に,扶養の範囲から外れる働き方をしていた場合には,合意分割の方法を選択しないと,一部期間について年金分割が行われませんので注意が必要です。 なお,弁護士等が作成した離婚協議書(私文書)だけでは,一方の配偶者のみで合意分割の手続をすることはできません。一方の配偶者のみで合意分割の手続を年金事務所にて行うことを希望する場合には,①年金分割に関する上記条項を,公正証書作成の際に明記する,②年金分割の按分割合の合意内容を記載した合意書を作成し,公証人における私文書認証の手続を行う,③年金分割の調停又は審判の手続を利用するなどの手段でする必要があります。強制執行認諾文言付き公正証書を作成する場合には,①の方法を利用すると良いでしょう。また,既に離婚が成立している場合において,元夫婦が,直接顔を合わせることができない事情がある場合には,③の方法も検討すべきでしょう。 年金分割の手続は,原則として,離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなります(厚生年金保険法78条の2第1項)。ただし,相手方が死亡した場合には,離婚をした日の翌日から2年を経過する前であっても,合意分割をすることはできなくなります。離婚成立後,相手方が死亡する前に,按分割合に関する審判書,調停調書,公正証書の方法による年金分割の合意がなされていた場合には,相手方が死亡した日から起算して1か月が経過するまでは,合意分割の手続をすることが可能です(厚生年金保険法施行令3条の12の7。なお,私文書での合意では,死亡後の年金分割の手続はできませんので注意が必要です。)。相手方が死亡前に,合意分割の合意をしていなかった場合でも,相手方が死亡した日から起算して1か月が経過するまでであれば,3号

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