事例でわかる 生前贈与の税務と法務
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86第2章 相続法改正後における贈与事例の法務と税務2 区画整理事業が予定されている土地の贈与対応の仕方1 将来の価値を考えて,評価が上がる前に贈与事案の概要 甲府富士夫は子に生前贈与をしたいと思っているが,対象は資産の将来性を見通して値上がりが予想できるものがよいと聞いた。資産の大半は不動産であるが,一部は自身の同族会社(株)富士興産が有している。また,上場株式もある程度有しているため,どのような資産をどのようなタイミングで贈与すればよいのか,知りたいと思っている。 土地の相続税評価額は上昇する都心部等の地域と下落する過疎地等の地域で二極化している。地価の上昇が予想できる土地を所有している場合には,精算課税を選択してでも高い評価の土地の贈与をすることも考えられる。土地の贈与は,地価上昇局面においては地価が上がる前にできるだけ早く,地価下落局面においてはできるだけ下がりきってから実行するのが有利である。 現在のような先行き不透明な時代においては,今後の区画整理や都市開発事業によって確実に値上がりすると思われる土地こそが,贈与すべき財産といえよう。 区画整理をする前の土地は道路付きや土地の形状が悪かったり,道路面と大きな段差があったりして時価も相続税評価額も低くなっている。このような区域で区画整理事業があると,形状のよい収益性の高い土地に転換し時価も相続税評価額も高くなろう。その結果,区画整理前の相続税評価の低いうちに土地を贈与することにより贈与税の負担も軽く,受贈者は区画整理後の価値の高い土地を自由に活用できるようになる。 区画整理後の土地の場合,基盤整備がほぼ済んでいるため,売却や有効活用が容易にできる。例えば土地の一部を売却し,数区画を定期借地権で賃貸して安定収入を確保するとともに,売却代金や定期借地権の保証金を原資として賃貸住宅経営を組み合わせる等の方法は相続税額引下げ対策として安全なうえ,非常に節税効果が高い。贈与と組み合わせて,より有利な方法を考える必要がある。いつ,何を贈与するのかがポイントCASE13

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