事例でわかる 生前贈与の税務と法務
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246第2章 相続法改正後における贈与事例の法務と税務対応の仕方1 従業員持株会の概要と効果事案の概要 佐賀満男は3代目の佐賀食品(株)の社長である。従業員も80人以上おり定着率もよく,従業員の福利厚生と相続税の節税のために,従業員持株会を設立して自社株式を譲渡や贈与しようと考えている。この方法が事業承継の効果的な方法だと聞いたが,従業員持株会とはどのような制度で,どのように運営すればよいのかを知りたい。 「従業員持株制度」とは,会社が従業員に何らかの便宜を与えて自社株式の取得・保有を推進させる制度で,最近この制度を導入する会社が増えている。非上場会社における大きな理由の1つとしては,オーナー経営者の相続対策ということも考えられる。 相続に際し,自社株式の相続税評価額が非常に高く会社のオーナー経営者が自社株式の大部分を所有していたとすると,非常に高額な相続税が予想される。しかし,これを担税力の面から考えると,取引相場のない株式は上場株式のような市場性がなく,相続税評価額で売却することは不可能に近い。また,経営権の問題から考えても,無制限に他人へ譲渡することもできない。 そこで,この自社株式の相続税対策の1つとして,経営権に影響のない範囲の株数を従業員持株会に譲渡,もしくは贈与することにより,株式を社外に流出させずにオーナーの相続財産を減らす手法がある。自社株式のうち経営上必要欠くべからざる議決権数はオーナー一族が所有し,経営権に影響がなく相続税の課税上オーナーが所有していると負担が重い部分を,従業員持株会に渡してしまうというやり方である。従業員持株会の活用による節税と福利厚生CASE42

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