事例でわかる 生前贈与の税務と法務
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284第3章 税制改正とこれからの動向2 税制改正大綱で相続税・贈与税一体課税の検討が継続対応の仕方1 日本の現行の贈与税と相続税の取扱い事案の概要 諸外国では贈与税と相続税が統合されており,日本でもこれらの制度を参考にした相続税と贈与税の一体課税が検討されている。どのような改正が予想され,その改正に備えどのような対策ができるのであろうか。 日本では贈与税と相続税は別体系になっており,相続で財産を取得した者の相続財産額に,相続開始前3年間の贈与額を加算して相続課税価格を計算する(暦年課税制度)。 また,60歳以上の父母・祖父母から贈与を受けた18歳以上の直系卑属である推定相続人及び孫等である受贈者が相続時精算課税制度を選択した場合には,相続財産額に相続時精算課税適用後における累積贈与額を加算して,一体的に相続税が課税される。よって,暦年課税制度では(相続開始前3年以内の贈与を除き)贈与と相続では税負担が異なるが,相続時精算課税適用後は贈与と相続で税負担は一体となる。相続時精算課税制度はアメリカの制度に近いといえよう。 暦年課税制度では,将来の相続財産が比較的少ないと想定される家族では,相続財産に課される限界税率に比べ贈与税の税率が高いため,贈与税のことを考えて生前贈与を抑制してしまうと考えられる。他方,高額な相続財産を有する家族では,相続財産に課される限界税率を下回る水準まで財産を分割することで,相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することができる。暦年課税制度による贈与税は,110万円の基礎控除と10パーセントから55パーセントの累進税率で課税されており,高税率で相続税が課税される富裕層にとっては,相続税率より低い税率の贈与を繰り返すことによって,大きく相続税を節税することになる。 令和2年12月10日に公表された「令和3年度与党税制改正大綱」では相相続税と贈与税の一体化の動向と対策についてCheck1

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