事例でわかる 生前贈与の税務と法務
51/58

第3章 税制改正とこれからの動向(出典:自由民主党・公明党「令和4年度税制改正大綱」(令和3年12月10日)10頁・11頁)〈資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討〉(2)相続税・贈与税のあり方 高齢化等に伴い,高齢世代に資産が偏在するとともに,相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており,結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば,その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。 一方,相続税・贈与税は,税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が,適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば,格差の固定化につながりかねない。 このため,資産の再分配機能の確保を図りつつ,資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。 わが国では,相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており,贈与税は,相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。このため,将来の相続財産が比較的少ない層にとっては,生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で,相当に高額な相続財産を有する層にとっては,財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている。 今後,諸外国の制度も参考にしつつ,相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から,現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど,格差の固定化防止等の観点も踏まえながら,資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて,本格的な検討を進める。 あわせて,経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は,限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから,そのあり方について,格差の固定化防止等の観点を踏まえ,不断の見直しを行っていく必要がある。285チェック1 相続税と贈与税の一体化の動向と対策について続税・贈与税の一体課税を検討するとなっており,今後の動向が注目を浴びた。しかし,与党「令和4年度税制改正大綱」において実際の改正項目は見当たらず,次のように検討事項として継続されることが示された。なお,閣議決定された財務省が公表した「令和4年度税制改正大綱」においても,このことについて一切触れられておらず,一体化が行われるとしても直ちにということではないと考えられる。

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る