事例でわかる 生前贈与の税務と法務
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第3章 税制改正とこれからの動向287チェック1 相続税と贈与税の一体化の動向と対策について4 課税の一体化に関する検討に対しどのように対応するか5 どのような財産の贈与が良いのかの財産を相続するのかとは関係なく相続税が決まる遺産税方式である。そして,課税される贈与税と遺産税(日本の相続税)とは税率表が共通で,一生を通じての累積贈与額と相続財産額に対して一体的に課税されており,一生涯の生前贈与と相続で遺産税方式による税負担は一定となっている。 また,フランスとドイツでは,遺産総額とは無関係に各相続人が取得した財産額に相続税が課税される遺産取得課税方式となっている。また,贈与税と相続税とは一体化されており,一定期間(仏15年,独10年)の累積贈与額と相続財産額に対し一体的に課税されており,一定期間の生前贈与と相続で遺産取得課税方式による税負担は一定となっている(内閣府「資産課税(相続税・贈与税)について―3.我が国と諸外国の相続・贈与に関する税制の比較」参照)。 この一体化が実施されるに当たり不明点が多々あり,どのように税制が改正されるかは不透明である。もし,長期間にわたる贈与と相続が税金計算上一体化されれば,今までのように暦年課税による贈与を繰り返しながら相続税を減少させる対策は,一体化された期間の節税効果がなくなろう。もし,贈与税と相続税を一体化する税制改正が行われることを想定されるなら,早期の贈与が最善の対策といえよう。 では,どのような財産が早期の贈与に向いているのであろうか。① 将来値上がりする可能性の高い財産 市街化区域への編入予定の調整区域内の土地や収用予定地など,現在の評価額が低くとも,将来その利用価値が上がる可能性の高いものがあれば,これを評価の低いうちに贈与することは大事な視点である。② 評価を引き下げてからの贈与 評価を下げてから贈与するという方法も考えられる。例えば,収益建物を建築すると貸家の評価になり,現金に比べると30パーセント~40パーセント程度の評価額になる。まさに,評価を圧縮して贈与するという方法であろう。

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