□1 カスハラの社会問題化⑵ カスハラが注目されている理由3(注3) 「令和3年版犯罪白書」(法務省 法務総合研究所)によると,刑法犯の認知件数は,平成14年には285万4,061件にまで達したが,平成15年に減少に転じて以降,18年連続で減少しており,令和2年は61万4,231件と戦後最少を更新した。 また,警察庁組織犯罪対策部「令和3年における組織犯罪の情勢」(2021年4月)によると,暴力団構成員及び準構成員等の数は,平成16年に87,000人であったが,以降減少し,令和3年末現在で過去最少の24,100人となっている。 ところが,現実には,各企業は契約以上の債務を履行することを要求され,契約の履行に何らかの落ち度があった場合には,徹底的に攻撃される。正に,「お客様は神様」の状態になってしまったのである。ウ ハラスメントに対する意識の変化 さらに,カスハラの受け手の側面から見ると,ハラスメントに対する意識の変化も影響したと考えられる。 昔からクレームは存在していた。昔の方が犯罪の認知件数や暴力団構成員数が多かったことからすると,(注3)粗暴的な側面においては,かつてのクレームの方が悪質だったかもしれない。 しかし,現在の社会においては,粗暴的な行為を含む「理不尽な行為」は許容されていない。カスハラの受け手の感覚も変わってきたのである。 パワハラやセクハラがカスハラに先立って社会問題化し,ひいては立法的手当てがなされたように,上司であっても顧客であっても,「理不尽な行為を許すべきではない」という世の中になってきたのである。 この点について,企業の役員や管理職は,意識を変えていく必要がある。自分の若いころに許容されていたからといって,現在の社会において許容されるとは限らないし,自分が若いころ我慢したからといって,部下に同じ我慢をさせることはできないのである。 以上の背景からカスハラが社会問題化したとして,なぜ各企業が重い腰をあげて,カスハラ対策に本格的に着手し始めたのであろうか。企業としては生き残るためには売上げを伸ばすことが重要であり,カスハラ対策は二の次の問題とも思える。
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