カスハラ
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カスタマーハラスメント対策の基本第1編□2 カスハラとクレームの異同5実態調査報告書」(令和3年3月)によると,過去3年間のハラスメント該当件数の推移については,パワハラやセクハラは「件数は減少している」傾向にあったにもかかわらず,顧客等からの著しい迷惑行為については「件数が増加している」傾向にあった。 さらに,UAゼンセン2020年アンケートによると,迷惑行為のきっかけとなった具体的な理由について,最も多い回答が「顧客の不満のはけ口・嫌がらせ」であり,全体の「33.1%」となっている。 これらの調査結果は,社内でのハラスメント(パワハラ,セクハラ)が禁止された結果,行くあてのなくなったストレスが社外でのハラスメント(カスハラ)に現れた可能性を示唆するものである。 いずれにせよ,本来であれば,社内でのハラスメント(パワハラ,セクハラ)を法律で禁止したのであるから,社外でのハラスメント(カスハラ)も同時に禁止すべきである。実際にハラスメント行為を禁じる国際労働機関(ILO)に2019年6月21日に採択された「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」においては,パワハラやセクハラのみならず,カスハラも禁止されている。 この点,2022年5月19日,国民民主党がカスタマーハラスメント対策法案を参議院に提出し,その後の同年6月8日,自民,公明,国民民主の3党がカスハラへの対策を検討する実務者協議を始めることで合意した旨の報道もなされている。カスハラに関する今後の立法化に期待したい。 近時用いられるようになった「カスタマーハラスメント」(カスハラ)と「クレーム」は何が同じで何が違うのだろうか。この点について,明確に記載している文献等はほとんど存在しないが,その異同を検討する。 まず,カスタマーハラスメント(カスハラ)は,直訳すると「顧客による嫌がらせ」である。日常的にも,ほぼそのような意味で用いられていると思われる。2 カスハラとクレームの異同2⑴ カスハラとクレームの意義

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