カスハラ
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カスタマーハラスメントの実務対応第2編ポイント ここで問題となっているのは,「企業側に落ち度があるか不明な場合」や「企業側に落ち度がない場合」に念書や謝罪文を出してよいかという問題である。 事実関係を確認した上で責任の判定をして【回答】(組織としての回答)をする場面(第1編第2章5)の問題とは異なる。同場面では,積極的に書面として回答することも検討すべきであるので,混同しないように注意が必要である。□2 念書等を要求された場合の対応⑴ 書面による謝罪を要求してくる理由⑵ 書面による謝罪をするリスク83 感情面だけを考えれば,書面の謝罪よりも口頭の謝罪の方が謝罪される側の納得感は強い。実際に,裁判や交渉において,「単に和解条項に謝罪条項を入れるのではなく,面と向かって謝ってほしい」という者が多くいることからも,そのことは明らかであろう。 それでは,なぜ,不当クレーマーは口頭の謝罪ではなく,書面による謝罪を要求するのであろうか。 その理由としては,①企業側が非を認めたことを証拠として残すため,②その書面を自分だけではなく誰かに見せるためなどが考えられる。 前述の顧客が書面の謝罪を要求する理由の裏表となるが,書面による謝罪をするリスクとしては,①裁判において証拠となるリスク,②インターネットなどで公開されるリスクがある。以下,それぞれ詳述する。ア 裁判において証拠となるリスク 最も懸念しなければならないリスクは,後に裁判になった場合に企業側に不利な証拠として提出されるリスクである。2 念書等を要求された場合の対応2 不当クレーマーの中には,口頭の謝罪だけではなく,謝罪文や念書などの書面を要求してくる者もいる。その際にどのように対応すべきか解説する。

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