法不動
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4か。大別すると次の4種類になります。⑴ 債務名義に基づく強制執行 これが通常「差押え」とよばれるものです。裁判で勝訴判決を得た,勝訴的和解で相手からお金を払ってもらうことになった,離婚調停で相手から慰謝料と養育費を払ってもらえることになった,ということは多いです。しかし,それでも相手が払ってくれないとき,その判決正本,和解調書,調停調書などが「債務名義」という差押えをする根拠となる書類となり,相手の財産(不動産や給料,銀行預金などの債権等)の差押えができます。 差押えの対象となる財産が不動産の場合は「強制競売」,銀行預金や給料などの債権の場合は「債権差押え」とよばれています。 この強制執行には,債務名義が必要とされ,債務者が裁判所に強制執行の申立てをし,審査された後,差押手続がなされます。⑵ 担保権の実行としての競売 これは,銀行などの金融機関が利用することが多い手続です。 銀行から住宅ローンや事業資金の融資をうけるときに,銀行としては,将来返済を続けることが難しくなった場合に備え,特定の財産(住宅ローンの場合は,購入する予定の住宅)を売却してその売却代金を返済に充てる,という手続をします。つまり,債務者(借りた人)が債権者(貸した人)に「この先,返済ができなくなってしまうようなときは,この財産(多くの場合は不動産)を売却して,その売却代金をあなたへの返済に充てます。」という内容の契約を債権者と債務者の間でします。この「返済のために提供する財産」を「担保物(又は担保)」,この債権者と債務者との契約を「担保設定契約」,債権者を「担保権者」,債務者を「担保権設定者」といいます。 ここで,将来本当に返済を続けることが困難になったときには,① 債務者(担保設定者)が自分で担保となっている財産を売却(「任意売② 債権者が裁判所に対して,担保不動産競売申立て,又は担保不動産収益執行申立てをして,その手続で得られる金銭を裁判所から配当を受ける。の2つの方法があり,ここでいう「担保権の実行」は②にあたります。もと却」といいます。)して,その代金を債権者(担保権者)に支払う。第Ⅰ章 民事執行手続とは何か

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