法不動
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特定してもらわないと できませんよ!あいつの預金を差し押さえてくれ!6第Ⅰ章 民事執行手続とは何か⑷ 財産開示 財産開示手続は,債務者がどのような財産を有しているのか,債務者自身に明らかにさせる手続です。 強制執行をするにあたっては,相手(債務者)がどのような財産を持っているかを債権者側で調べて,その特定の財産に対して強制執行を行うというのが手続の流れです。この点,差押えの申立てをすると,裁判所が相手(債務者)の財産を探し出して差し押さえる,と思っている人が多いのですが,そういうことはありません。一般の人(○○×士という肩書きの人も含めて)の中には,相手(債務者)の預金差押えの申立てをすると,裁判所が全国の金融機関の中から債務者の預金を探し出して強制的に差し押さえる,と考えている人がいるのですが,大きな誤解です。だいたい日本全体に銀行をはじめとした金融機関がどのくらいあるか,その中から特定の人の預金を探し出すなんて手間と費用のかかることを裁判所ができるはずがありません(というか物理的・人員的に不可能でしょう。)。だって,「山田太郎」さんという債務者がいたとして,名前だけで考えると,日本全国に何人の「山田太郎」さんがいるでしょうか。また,過去に開設した銀行口座で当時から住所変更していない人もいるでしょう。生年月日だって同一の人もいる可能性があります。その中から,当該債権差押事件の債務者である山田太郎さんをどうやって特定するのか。おそらくそれは不可能でしょう。ですから,債権差押えを

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