なければならないということはありませんし,また,任意に出て行くことは構いません(民執46条2項)。売却後は,新たな所有者(強制競売の手続によって不動産を買い受けた人)から明け渡すようにいわれると,出ていかなければなりませんし,新たな所有者が賃貸人(家主)としてその時点で住んでいる人と賃貸借契約をするというケースもあります。 対象となる不動産ですが,仮に債務者が「A不動産」「B不動産」「C不動産」と複数の不動産を持っているとすると,この「A不動産」「B不動産」「C不動産」のいずれか,又はすべてを対象とすることができます(ただし,不動産の所在地がすべて異なり裁判所の管轄が異なる場合には,申立てが少し複雑になります。)。対象となるものは土地,建物その他登記のできる土地の定着物で(民執43条1項),登記のできない土地の定着物は独立して強制競売の対象とならず,動産執行の対象となります(民執122条1項)。さらに,不動産の共有持分,登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分も,民事執行法上は不動産とみなし,強制競売の対象となります。 強制競売によって配当を受ける債権者の債権は,一般債権であるので,競売の対象となった不動産に担保権を有する債権者がいるときは,配当の段階で,その担保債権者が優先的に配当を受けることになり,申立債権者はそれに劣後して配当を受けることになります。② 担保不動産競売(民執180条1号〜) これは,債権者と債務者の間で「担保設定契約」を締結し,債務者が返済できなくなったとき,申立てにより,その担保物を競売手続により売却して,その売却代金を担保権者である債権者に配当する手続です。強制競売の手続をほぼ準用していますが,申立てには債務名義を必要としない代わりに担保権の存在を証明する文書の提出を必要とします。不動産競売の場合,そのほとんどの場合担保権の登記がされた不動産登記事項証明書を提出します。 対象となる不動産は,担保が設定されている不動産で,仮に「A不動産」と「B不動産」があるとして,「A不動産」のみに担保が設定されているとすれば,たとえ「B不動産」の方が売り易く,価値が高いとしても「A不動産」しか競売することはできません。 担保不動産競売では,申立債権者の債権は担保権付債権ですから,(担保8第Ⅰ章 民事執行手続とは何か
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