iはしがき① 遺産分割対策(円満相続のための対策)② 納税資金対策③ 財産の評価減対策(節税対策) 相続対策をする際には、次の3点の対策とその順番が重要です。 相続対策というと、つい「少しでも相続税を減らしたい!」と、最初から③の節税対策に目が向きがちですが、節税先行の対策をしてしまうと、いわゆる「争族」や納税資金不足に陥りかねません。したがって、多くの場合、節税対策は相続対策の中でも最後の段階、つまり、①で円満な相続がなされる対策が整って、②で納税資金もある程度めどがついている状態で検討することが望ましいとされます。 本書では、近年、①の遺産分割対策としての効果が期待されている民事信託について、これだけは知っておいてほしいという基礎的な情報を中心にご紹介します。 第1章は、本書を読み進めていただくにあたり、民事信託とはどういうものなのかという全体的なイメージをもっていただくために、民事信託の主な特徴をまとめました。 第2章は、田中家の会話をとおして、認知症対策としての民事信託の活用事例や、他の制度との違い、活用にあたっての注意点などを解説しました。 第3章は、図表とともに、民事信託を検討する上でぜひ知っておいていただきたいチェックポイントを記載しました。 そして、第4章は、第3章までを読んでいただいて、「ぜひ民事信託を活用したい!」と前向きに考えていらっしゃる方向けに、本当に信託が必要なのか、商事信託でなく民事信託で本当に大丈夫なのか、民事信託を活用することでトラブルになることはないかなど、今一度、冷静にご確認いただきたい事項をまとめました。 信託は、万能の制度ではなく、必ずしもすべての方にとって必要となるものでもありません。しかし、一方で、財産承継に関して、信託を使わなければ解決できない想いをお持ちの方もいらっしゃいます。本書が、信託の活用を検討されるすべての方にとって、信託に関する理解を深めるための一助となりましたら幸いです。 なお、本書内の図表は、筆者が作成した資料を基に再構成したものであり、一部、前著『図解 相続対策で信託を使いこなす』(中央経済社、2019)、『そこが知りたはしがき
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