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5 信用供与・信用補完と倒産時の規律9第1講 倒産法─総論債務者A破 産 平常時,民法の世界で見た貸金債権者Bは,債務者Aに対し,債権という請求権を有していますが,図に示せば,1本のベクトルがあるだけの状態です。この状態は,債権者が債務者に対し,債務につき期限の利益を付与している状態,すなわち信用を供与,与信している状態にあります。これとは異なり皆さんが日常経験する商品引渡しと代金支払が同時に行われる場面では信用の供与はしていません。 この信用供与は,平常時では,一般債権者ということですが,倒産時,債務者が破産した場合,これまでに見た破産手続という清算手続において他の破産債権者とともに平等な配当を受けるのみ,場合によっては一切の配当がないかもしれない,という倒産リスクを引き受けた状態にあることになります。「債権」というのは本来的にそのような性質を備えているのです。 この信用供与や倒産リスクを引き受けたという理解は,倒産法において様々な場面で登場しますので,意識しておいてもらった方がよいでしょう。 さて,ここまで進んできて,せっかくお金を貸してあげたのに,それは倒産リスクを引き受けたのだ,と言われると,お金を貸すときの判断に迷いが生じかねません。そこで,この倒産リスクを避けるために,例えば,連帯保証してもらったり,債務者Aの不動産に抵当権を設定してもらったりするこ 旧破産法における「破産宣告」を,現行法は民事再生における「再生手続開始決定」とパラレルに「破産手続開始決定」としましたが,「破産」や「破産者」という用語は残りました。この点,債務者が法人なら清算手続の一環ですし,個人なら経済的再生のための利用がメインとなっています。「破産」や「破産者」という用語自体の前提が崩れたといえるのではないでしょうか。 次は,これらの用語のリニューアルの番でしょう。⑴ 信用供与⑵ 信用補完1000万債権者B回収不能倒産リスクの引受

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