16⑵ 特別清算⑶ 私的整理第1編 倒産法─総論ず管財人を選任し,原則として株主権にも変更を加え,担保権も更生担保権として手続内に取り込み,担保権の実行を制限します。 会社法上,解散した株式会社は,通常の清算手続により株主に残余財産の分配を行いますが,債務超過の場合,残余財産の分配はありませんし,貸借対照表上,資産と負債をいずれもゼロにしないと清算を結了できません。ちなみに,破産の場合,債務超過のまま終了します。そこで,特別清算の手続により,一般債権である協定債権を協定に基づき権利変更し,債務超過を解消する方法があります。権利変更の方法は,民事再生における再生計画とよく似ています。 これまでは,破産法,民事再生法,会社更生法とそれぞれの法律がありましたが,特別清算は会社法の中に規定されています。この4つを合わせて倒産四法といいます。特別清算は,破産とはやや異なる観点からの清算手続ですが,清算型の法的整理として位置付けられます。また,民事再生,会社更生,特別清算は,多数決原理により反対債権者の権利変更を認める点で共通しています。 倒産法の世界には,倒産四法による法的整理手続だけではなく,裁判外で,対象とする債権者全員の同意を得て,私的に債務整理を行う私的整理があります。この私的整理にも目指す方向により再建型と清算型があります。 再建型の私的整理には,準則(ルール)が定められたものがあります。おおよその共通した手続としては,金融機関債権者を対象に,一時停止の要請を行い,第1回債権者会議において,私的整理に至った事情や資産・負債の状況,私的整理の方針の説明を行い,金融機関債権者に私的整理手続中は期限の利益を喪失しないようにしてもらいます。そして,財務,事業のデュー・デリジェンス(調査・DD)を行った上で,事業再生計画案を作成し,第2回債権者会議で説明,協議し,第3回債権者会議で決議し,対象債権者全員の同意があれば成立し,1行でも反対があれば,不成立となります。原則非公表ですので,成立しても対外的に見えませんが,不成立だと,法的整理に移行することが多いです。 清算型の私的整理にも,最近は準則(ルール)が定められたものがあり,例えば簡易裁判所で行われる特定調停を用いることがあります。
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