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8 倒産法の周辺領域17第1講 倒産法─総論 倒産法の世界は,単に破産法や民事再生法を用いるだけではなく,その周辺領域として,多くの場面で多数の法律と関連しています。 例えば,司法試験論文式試験の選択科目で見てみると,まず,労働法は,大きく関係してきます。債務者が法人の場合,破産であれば,ほぼ必然的に従業員の解雇を伴いますし,民事再生でも,事業継続を前提としつつも,リストラに伴う整理解雇が問題となり得ます。また,実務家からすると未払賃金立替払制度は企業倒産時の従業員のセーフティネットとして非常に大切ですが,労働法で触れられることはほとんどないと思われます。債務者が個人の場合,雇用契約(労働契約)に影響はありませんが,事実上の影響が心配されるところです。 次に,経済法は,スポンサー型の民事再生等において,スポンサー側で独占禁止法に基づく公正取引委員会の諸手続が必要であるなどの面で関連します。 知的財産法は,債務者が特許権や商標権等の知的財産権を有する場合に,その換価の場面で関連しますし,ライセンス契約のライセンサー(実施・利用許諾者)又はライセンシー(実施・利用権者)の場合の処理を要します。 さらに,国際私法は,国際事案の場合に,準拠法の問題がありますし,外国倒産処理手続の承認援助手続を要する場合が生じます。ただ,国際法でも国際公法は,なかなか関連する点が見つけにくい分野でしょう。 また,租税法は,各種公租公課につき,税務申告を要する場合があったり,租税等の請求権につき 倒産手続内における債権の優先順位があったり,債務者が法人でも個人でも必然的に関連してきます。 最後に,環境法は,例えば,土壌汚染があった場合の対応等,資産状況が悪化している債務者の倒産処理手続において,悩ましい場面が生じるところです。 このように,倒産法は法律問題のるつぼといわれるのも頷けるのではないでしょうか。そして,倒産法を知ることで周辺領域を知ることもできるわけです。

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