9 倒産法を学ぶ意義18第1編 倒産法─総論① 倒産時は,平常時の民法の世界の規律を修正したり,尊重したり,ときには独自の規律を設けて最後の姿を示している。② 破産は,法の定める優先順位に従い,債権者平等原則を徹底した平等な分配を行う清算手続である。③ 民事再生は,事業の再生を目指しつつ債務を整理する手続である。 倒産法を概観してきたこの講の最後に筆者らが思う倒産法を学ぶ意義に触れておきます。 倒産はないに越したことはない,そのとおりです。倒産を望む債務者はいませんし,債権が回収不能になってもよいと思う債権者はいません。しかし,現実には何らかの理由で経済活動が破綻し倒産という事態が発生することは避けられません。それにもかかわらず倒産状態におけるルールが何もなければ,早い者勝ち,実力行使,不平等行為といった事態を引き起こし,もはや法治国家としての秩序は維持できない状態に陥るでしょう。倒産法があることで私たちの社会の秩序は維持されているのです。この意味で倒産法は社会との関わりの非常に強い極めて重要な法であることに気付くでしょう。 さらに,意外かもしれませんが,倒産法は,債権者にとっては適正かつ公平な弁済が保障され,債権者自身の経済活動の破綻を回避する,債務者にとっては一度すべてを清算してリスタートを図るという意味で,実は前向きな,未来志向の法律なのです。このことから,筆者らは,数ある弁護士業務の中でも倒産事件が最もやりがいを感じる仕事だと思っています。 このような倒産法の役割からすれば,これを学ぶのは必然といえるでしょう。 さあ,まずは破産法から講義を始めましょう。 この講のまとめ この講のまとめ
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