民釈
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2 第1編 民事訴訟における裁判官の釈明・指摘義務〔1〕 民事訴訟において裁判所の釈明権の行使が果たす実務的な役割の重要性に鑑み,従来,釈明権・釈明義務の検討は実務的な観点からのものが主流であった。ここでは釈明権を行使する裁判官の制度目的の理解が基準となり,どの範囲で釈明権を行使すべきかが論じられてきた。しかし,民訴法149条は単に実務的な観点により定められているというよりは,判決の効力を受ける当事者が訴訟において事実上および法律上の諸事項についての自己の意見を正確かつ完全に表明できるようにし,訴訟資料の包括的な明確化を期するという裁判所の配慮義務を定めるものである。この配慮義務の背後には,憲法上の保障である当事者の法的審問請求権,および公正手続原則がある。法的審問請求権は,日本法においても個人の尊厳の保障と裁判所の面前での平等に基づき,両当事者に平等に憲法上保障されていると解することができる。公正手続の保障は国際人権規約の定めるものであり,憲法上の保障かどうかは別として,少なくとも法律上の保障であるということはできる。また,法的審問請求権や公正手続請求権との関連で,裁判所の当事者に対する法的観点指摘義務も一定範囲において承認されなければならない。 筆者は現行民訴法の制定前である1993年に刊行された竹下守夫╱伊藤眞編『注釈民事訴訟法⑶』(有斐閣)において当時の民訴法127条等の注釈を担当したが,それから30年近い歳月が流れた。その間,1996年に新しい民訴法(現行民訴法)が制定公布され,1998年に施行された。この法律は釈明権に関して,民訴法旧127条の新規定である現行民訴法149条により,口頭弁論の期日外においても裁判所は釈明権を行使できること(1頁),この場合には行われうる釈明権の行使が攻撃防御方法に重要な変更を生じうるものであるときはその内容を相手方に通知しなければならないこと(4頁)等を定めたにとどまり,制度の基本的な部分には変更をもたらさなかった。もっとも,弁論準備手続においても釈明権行使が争点整理との関係で重要な役割を演じ,裁判官主導の争点整理のために利用されるのでは序 章

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