民釈
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4 第1編 民事訴訟における裁判官の釈明・指摘義務〔2〕日指定の求めを拒否し,当事者の主張に耳を傾けることを拒みながら,他方において,事後審的運営の控訴審実務においても,控訴裁判所が実質審理を行わないで原判決を取り消している裁判例も相当数存在する。このような口頭弁論による実質審理を全く行わない控訴審実務では,高等裁判所が第一審裁判所の手続違反を是正し,自ら釈明権を行使して事案の解明に当たることは殆ど不可能であるのみならず,控訴裁判所自身が事案の解明に当たらず,しかも原判決を取り消すという著しい手続違反がなんの躊躇もなく行われる。第一回結審をしないで,丁寧に事件の検討を行い,場合によっては証拠調べも実施している裁判所がわずかに存在するにすぎない。控訴審の事後審的運営が控訴審を第一審手続の続行として規律している現行民訴法の下で許されるか否かがまさに問題なのである。 以上述べたような,この30年間に生じた法律改正や実務の変容に鑑み,一方において,旧法および現行民訴法のもとに展開されている釈明義務に関する判例を検討する必要が痛感される。現行民訴法の下においても判例違反は上告受理申立て理由だからである。他方において今日,民事訴訟にとっても,訴訟における当事者の法的審問請求権の保障や公正手続原則の実現が重要な課題となっているが,これと非常に密接な関係を有する釈明制度の意味付けにおいて,これらの諸原則は文献や実務において従来さほど考慮されてこなかったし,いずれにせよ詳しい検討はなされなかった。これは誠に驚くべきことである。今日の実務や学説における1つの傾向は,裁判所による釈明権行使の裁量化とその限界をめぐる議論であり,法的審問請求権や公正手続請求権とは真逆の方向にある。法的審問請求権や公正手続請求権への関心が希薄な学界にあっては,また釈明について実務家諸氏の研究が圧倒している現況では,このような方向の議論が生じるのはある意味で必然であろう。 本編は,以上のような実務と学説の状況の中にあって,釈明制度の意義を当事者の法的審問請求権の保障および公正手続原則の側から位置づけることから出発して,釈明権・釈明義務についての基本問題の再検討を試みるものである。そのさい,近時学説の注目を集めている裁判所の法的観点指摘義務の意味および適用範囲も検討される。2)控訴審における釈明の問題,2)現行民訴法下の釈明権・釈明義務および法的観点指摘義務に関する論説として,奈良次郎

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