民釈
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8 第1編 民事訴訟における裁判官の釈明・指摘義務〔4〕は証拠申出を促すことにより訴訟資料の包括的な明確化に協力する裁判所の権能ないし義務を定めるものである。 裁判所は手続の円滑な進行のため訴訟指揮上種々の権能を有するが,その1つとして訴訟関係の明瞭化のために裁判所には釈明処分(民訴151条)とならんで,釈明権が与えられている。釈明処分や釈明権の行使は,大いに判決の内容に影響を及ぼし得るため,口頭弁論期日の指定・変更,口頭弁論の併合や分離のような他の形式的な訴訟指揮権とは異なり,訴訟審理の内容面に関わるので,とりわけ重要な意味を有する。 民訴法149条は,民事訴訟手続における当事者との関係における裁判所の任務についての基本規定である。裁判所の任務は,訴訟上の準則の遵守を監視するほか,当事者が自ら提出した訴訟資料を消極的観察者として受け取り,必要に応じて証拠調べをして,これを基礎に裁判に纏めあげることにとどまるものではなく,法律上,裁判所には質問=指摘義務によって当事者の発言に質問および指摘の形で積極的に介入する任務が課せられている。すなわち,裁判所は,釈明権・釈明義務によって,当事者が掲げた目標に訴訟が到達するよう配慮しなければならない地位にある。2)できるだけ完全な訴訟資料による権利保護に到達できるように,訴訟資料が事実面および法律面において完全かつ明瞭に揃うように配慮することが,権利保護請求権を憲法上の権利として承認している憲法のもとで司法権の行使を担う裁判所の任務である。3)権利侵害を受けた者が裁判所の面前において自己の権利を有効に主張できなければならず,そのために当事者には法的審問請求権が付与されるとともに,訴訟当事者のために裁判所の配慮義務が裁判手続に対する法治国家原則の要求として承認されなければならない。このような裁判所の任務は,形式的訴訟指揮と区別して実体的訴訟指揮と呼ぶことができる。4)この意味で釈明権・釈明義務は,裁判所に受動的な態2)条解民訴〔第2版〕920頁[新堂╱上原] 参照。3)憲法は私人の憲法上の(抽象的)権利保護請求権を保障していることにつき,松本博之「民事訴訟法研究の出発点に立ち返って」同・立法史と解釈学521頁,533頁以下参照。4)釈明義務は,原告がいかなる趣旨の判決をいかなる法律上の原因により求め,被告がどのような主張をし,どの点に双方に争いがあるか,当事者がどのような証拠を提出するかを「訴訟の進展に連れて明らかにし,以て原告の請求の当否を決せしむることを其の目的としている」という見解(村松・研究6頁)や,民事訴訟の審理において,裁判所の行う「実体形成の中核的な作業」だとする見解(たとえば,加藤新太郎「釈明」大江ほか編・手続裁量123頁)があるが,釈明は裁判官の心証形成が目的ではなく,訴訟資料の明確化・完全化の

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