民釈
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〔8〕〔9〕第1章 釈明権・釈明義務と当事者の法的審問請求権 11かどうかではなく,具体的な訴訟における訴訟関係に基づき釈明権行使の必要性があるかどうかである。当事者または当事者を代理する弁護士が適切に注意を払えば,陳述が不明瞭であるか,矛盾しているかまたは不十分であるかを自ら認識すると期待できるかどうかが重要なのではないので,これによって釈明の要否を決することはできない。 さらに具体的な訴訟事件において,裁判所が事件の解決にとって重要と考える法的観点が当事者(およびその訴訟代理人)の重要と考えるものと食い違い,注意深い当事者もそのことに気づかないという事態も起こりうる。このような場合に,裁判所がこの点を当事者(およびその代理人)に指摘して,これに対して当事者が意見を述べることによって裁判所の見解に影響を及ぼす可能性を得,または裁判所の法的見解に適合する訴訟資料や証拠方法をさらに提出する機会を与えられなければ,当事者が裁判所の言い渡す判決によって不意打ちを受けることは明らかである。裁判所がその裁判によって当事者に不意打ちを食わすことは,法治国家における公正な裁判手続の要請や法的審問請求権の保障に反する。法的審問請求権や公正な手続の要請は,裁判手続に対する憲法上の要請またはこれに準ずるものと考えられる。これらの憲法上の要請と民訴法上の制度である裁判所の釈明権・釈明義務の関係について関心が払われなければならない。従来の民訴法学においては,判決効との関係で当事者の手続保障に関心が向けられたが,その場合にも,手続保障はどちらかというと理念的に論じられたのであり,審理面での手続保障には一部を除き関心が向かわなかったように思われる。 裁判所に訴訟関係を明瞭にするために釈明権が与えられているが,釈明権論・釈明義務論は当事者の法的審問請求権,公正手続請求権,民訴法の諸原則,当事者間の武器対等の原則や裁判所の中立義務との関係を有する。そこから,釈明権の行使の法的基礎や釈明義務の範囲について困難な問題が生じうる。裁判所の中立義務や当事者平等原則に反しない釈明義務の範し,必要な競争状況を歪めてはならない」と主張する。この見解に対しては,ZPO139条は不充分な陳述が弁護士の不注意によることを前提にしていないことが無視されていると批判される。Nober/Ghassemi-Tabar, a.a.O. なお,高田昌宏「訴訟審理の実体面における裁判所の役割について」栂・遠藤古稀299頁,324頁以下,331頁も参照。⑷ 釈明権・釈明義務論の課題

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