民釈
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はしがき 1 本書第1編は,民事訴訟の審理において当事者の訴訟行為と共に重要な役割を果たす裁判所の釈明=指摘義務について,これまでの判例および学説を振り返り,新たな展望を開こうとするものである。 釈明制度について,これまで多くの研究が発表されてきた。そこでは事案の真相に合致した裁判を追求するという視点が強く打ち出され,そのためなら裁判所の中立義務違反は生じないという見解が見られた。もちろん,実体関係に合致した裁判が重要なことはたしかである。しかし,弁論主義・処分権主義という基本原則が妥当する民事訴訟において,この釈明制度の捉え方には偏りがあるのではないかと思われる。本書はこの伝統的な釈明制度の理解に対し,釈明制度は当事者の法的審問請求権を具体化する制度であるという基本的な立場に立って,従来の判例の意味を明らかにすることを試みた。 近時の学説上の議論として,伝統的な訴訟関係の明瞭化という釈明制度の目的のほかに,当事者に対する裁判所による法的観点や事実的観点の指摘の必要性が論じられている。これは具体的な訴訟において裁判所が重要とみなす,事件に適用される法的観点や事実的観点が当事者のそれと食い違う場合に,これを放置して裁判がなされると,当事者は裁判によって初めてそのことを知るので,不意打ちを受ける。そのような不意打ちの裁判は法治国家の裁判手続に相応しくないので,一定の要件の下で,裁判所は当事者に裁判所が重要と見なす法的観点や事実的観点を指摘して不意打ちを防がなければならないとする考え方である。最高裁判所の判例においても,これを明示的に承認したものもある。釈明制度を定める民訴法139条1項も法律上の事項を裁判所の釈明の対象としているので,この法的観点指摘義務は民訴法139条によってカヴァーされているとみることができる。 当事者は民事訴訟において手続主体として尊重され,当事者には憲法上の法的審問請求権(ヒヤリング権)を保障されなければならない。これに対応して,裁判所は当事者の法的審問請求権の有効な行使を可能にするよう,訴訟手続において一定範囲の積極的な行為をする義務を負うとともに,当事者の法的審問請求権を侵害してはならない。法的審問請求権は,当事はしがき

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