1 民法と区分法 1① 民法は,昭和37年に「建物の区分所有等に関する法律」(以下「区分法」という。)が制定される前,数人で一棟の建物を区分し,それぞれその一部を所有する場合の所有者間の法律関係については,次のとおり定めるにすぎなかった。(注)a 区分建物の共用部分を区分所有者の共有に属するものと推定する(旧b 修繕費等は,各自の所有部分の価格に応じて負担する(同条2項)。c 共用部分の分割請求を禁止する(旧257条)。② これらの規定を適用する対象は,ほとんど棟割長屋の区分所有に限られ,その数も決して多いとはいえない状況であった。ところが,第二次世界戦争後,都市再開発をするため,鉄筋アパートや共同ビルなど中高層建物が急激に増加し,それとともに,これらの建物を区分所有する事例が多数発生した。建物の区分所有は,都会おける宅地・住宅の不足を打開し,土地利用の高度化・都市の近代化を促進する上においても,重要な役割を占めることになったのである。この区分所有のシステムは,棟割長屋を対象とする単純な縦割式区分所有とは種々の点で異なるものがあったから,法律的にも新しい問題を提起し,民法の規定が不備であることを認識させた。そこで,主としてこの事態に対処するために制定されたのが区分法である。③ 区分法は,建物の区分所有のほか,いわゆる団地の管理についても規定している。戦後,都市における住宅難を緩和するために,各地に住宅団地が造成され,住宅が分譲されたところでは,住宅所有者が共同で団地の管理をしなければならないこととなった。しかし,住宅所有者が団地の管理を行うに当たっては,民法その他の法律には特別の規定が設けられていな208条1項)。1 民法と区分法1:1 民法の規定
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