マンション関係法詳解
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1 民法と区分法  5旧区分法(昭和37年法律69号,昭38.4.1施行)は,一棟の建物を区分所有者に排他的に属する「専有部分」と区分所有者の共用に充てられる「共用部分」とに分け,共用部分を区分所有者の共有とし,その管理・使用については,各区分所有者の権利・義務を定めた上で,規約及び集会の議決による自治運営を広く認めた。特に,敷地利用権を有しない区分所有者がいるときは,敷地の権利者は,その区分所有権を時価で売り渡すことを請求する権利を認めた(旧7条,10条)ことは,画期的なことであった。(注)しかし,旧区分法は,次第に制度上の欠陥を指摘されるようになった。その主な点は,次のとおりである(コンメ2,なお,五十嵐・12章4)。① 土地と建物とは,別個の不動産であるとする民法の法律構成に従い,専有部分の区分所有権と敷地利用権との間に特別の結合関係を設けなかった。そのため,土地と建物を一体として取り扱うことが困難であった。② 規約を設定・変更・廃止し,又は共用部分を変更するには,原則として,区分所有者全員の合意が必要であった。そのため,その管理・運用に支障を来すことが多かった。③ 区分所有者の団体についての規定がなく,法人格を取得する方法がなかった。そのため,「権利能力なき社団」(判例①)として活動するしかなかった。④ 区分建物の占有者に法律上及び規約上の義務を負わせることが難しかった。そのため,共同生活に支障を来すことがあり,また,区分所有者又は占有者らに共同の利益に著しく反する行為があっても,有効な制裁手段が存在しなかった。⑤ 建物の建替えをする場合に必要な規定を欠いていた。1:2:1 旧区分法の制定(注) 区分所有者による他の区分所有者に対する請求権について(判例⑧,㉒)

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