28この相談事例の場合には、当事者の本国法がそれぞれフィリピン法と日本法になります(ただし、既に述べたとおり、フィリピン法は婚約自体に何か効力を与えているわけではありません。)。次に婚約が成立するとして、婚約の破棄により賠償義務が生じるか否かについては、どのように準拠法が決定されるのでしょうか。この点については、先ほど2で述べた「婚約の成立」と同様に通則法24条(1項)とする見解、「不法行為」の問題であるとして通則法17条以下、通則法上の「その他の親族関係」の問題として33条によるによる見解(この見解は、上記2で述べた内縁関係の成立の問題とその効力の問題を分けずに、すべて通則法33条によるべきというものです。したがって、この見解は、上記2で述べた問題についても、通則法33条によることになります。)等があります。①通則法24条1項により準拠法を決定する場合や、②通則法33条による場合には、それぞれの本国法(日本法及びフィリピン法)を適用することになり、③通則法17条以下で準拠法を決定する場合は、日本法が適用されることになります。①又は②の場合に、双方で賠償責任が肯定される場合の賠償額の算定については、日本法による見解や、いずれか低い方による見解等があります。以下、婚約の不当破棄に関連する日本法及びフィリピン法について説明したいと思います。⑵ 日本法についてまず、日本法の場合ですが、これは既に上記2⑴で述べたとおり、不当な破棄であれば、債務不履行責任に基づく賠償責任が生じます。債務不履行に基づく損害賠償責任は、不法(違法の程度)が強い場合、不法行為責任に近いことから、財産的損害だけでなく慰謝料も含まれるべきと解されています。⑶ フィリピン法について既に述べたとおり、フィリピンにおいては、婚約それ自体に関する明文の規定がなく、賠償責任を負うかは、フィリピン民法の解釈問題です。また、フィリピン法では、婚約については事実的な効力にとどまり、婚約がイ 準拠法の適用3│ 婚約の不当破棄について⑴ 準拠法の決定
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