フ家事
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第1 婚約・婚姻・再婚31●土着の慣習●カトリック教徒の場合●フィリピン法による場合フィリピンの土着の慣習では、地域により差があるものの、一般的には男性側が女性の家のバルコニーの下で歌ったり、直接言葉を交わす代わりに女性が手にした扇で意思表示をしたり詩を送ることで交際が始まりました。親族から婚姻への同意が得られると、男性とその両親が女性の家を訪問して女性に贈り物をし、女性側の親族は食事を提供し、両家の間で正式に婚約が整ったこととされました。近年は、人前でのプロポーズや婚約指輪を身につける等の西欧の慣行が行われることが多いようです。フィリピン人当事者がカトリック教徒の場合には、一般的に、カトリック教会での婚姻挙行の前提としてその教会での挙行前セミナー(canonical interview, dulog)への出席が求められます。詳細は挙行を担当する聖職者の判断によりまかんすが、一般的にはカトリック教会の婚姻に関する教義の理解の涵をはかり、夫婦として生きていくための心構えを説いたり祈りを唱えたりします。婚姻予定の日本人がカトリック教徒でない場合でも、入信するか否かは当事者の自由ですが、セミナーへの出席や夫婦の間に子が生まれたら洗礼を受けさせカトリック教徒とすることが期待されるかもしれません。フィリピンでフィリピン法による婚姻の挙行をする場合には、成立要件を充足している限り、役所での民事式の婚姻登録ではなくフィリピン人当事者が所属する教会での挙行も有効な方式と認められるので、後者を選ぶ場合には、その教会での挙行の一環としてこのような婚姻挙行をする教会が求めるセミナーへの出席が求められることがあるでしょう。これに対して、日本で日本人とフィリピン人とが婚姻をする場合には、日本法が準拠法とされますので、フィリピン人が所属する教会での結婚式の儀式挙行やセミナーの出席は、その婚姻の成立になんらの影響を与えません。しかし、フィリピン人当事者が日本人当事者にも出席・挙行を望む場合には、相手方自身やその親族との関係性を配慮してあげることが望ましいと考えられます。よう養column6フィリピンでの婚約と結婚式

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