フ家事
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はしがきi本書は、「外国法制研究会(旧名「外国(身分関係)法制研究会」)で行ってきた国際共同研究の成果の1つとして企画され、特に日本人とフィリピン人との国際的な家族関係の実務に必要かつ重要な法律情報を提供することを目的として、研究会会員の有志が執筆しました。この研究会は、研究者及び実務家で構成されており、内外の専門家と各国の家族関係法制に関する共同研究を行い、その成果を日本加除出版株式会社の『戸籍時報』に2006年から現在まで、ほぼ毎号掲載させていただいています。連載開始の翌年にはフィリピン家族法概説の翻訳を掲載しましたが、実務上、フィリピンの最新かつ詳細な法律情報の共有の必要性が非常に高いという共通認識を持って、繰り返し現地調査を実施し、専門家を国際会議に招聘して共同研究を行ってきました。現在、日本に中・長期在留する外国人のうち、フィリピン人は、中国、ベトナム、韓国に次いで4番目に多い28万人で、そのうち約20万人が女性です。バブル経済期に来日し、エンターテイナー等として就労した女性たちの中には、日本人男性と婚姻したり婚外子をもうけるなど、多くの方々が日本人との親族関係を築いて日本に定着してきました。在留が長期化するにしたがって、日本人とフィリピン人との間に多様で複雑な身分関係や法律関係が生じていますが、今後は、技能実習や特定技能等の在留資格で定着する若い世代の間でフィリピン人同士の家族関係も増加すると考えられます。本書は、必要な情報にアクセスしやすいようにQ&A方式をとっていますが、各々の法律問題について準拠法と内容を示すだけではなく、日本とフィリピンでの手続や留意すべき事項について段階を追って説明しつつ、その次に検討すべき問題や対応も示しているので、特に弁護士にとっては、依頼人に関わる法律問題を包括的に把握する上で強力なマニュアルになるはずです。しかし、本書はもともと、渉外事件を扱う法曹だけではなく、市区町村役場等の担当者、家庭裁判所の家事調停委員や調査官、国際機関・公的機関やNPO等の民間支援団体、フィリピン人を支援する教会関係者、要保護状態にある子どもや非行少年の支援をしている方々にも読んでいただきたいとの思いから企画しました。読み手の立ち位置によっては、詳細に過ぎると考えられるかもしれませんが、は し が き

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