学労
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2序章 弁護士として教員の働き方を考える1 教員の労働問題は社会問題文部科学省が2016年に実施した調査1によれば、公立小中学校教員の1週間当たりの学内総勤務時間は、小学校教諭で57時間29分、中学校教諭で63時間20分になり、1か月当たりで学内総勤務時間中の時間外・休日労働時間を換算すれば、それぞれ約68時間、約94時間になります。特に学内総勤務時間が多いのは、小中学校とも副校長・教頭です。しかも、この時間は学内で勤務した時間のみが対象であり、持ち帰ってせざるを得なかった仕事の時間は含まれていません。一方、2019年より順次施行されている働き方改革関連法では、時間外労働時間の上限を1か月で45時間以内、かつ1年間で360時間以内を原則としています。つまり、現状の公立小中学校教員の労働時間はこれを大幅に上回っているのです。本来であれば、公立学校教員には給特法と呼ばれる法律が適用され、四つの業務以外の残業は認められていません。しかし、実際には先生たちは様々な業務で事実上の残業を強いられています。このため、文部科学省は2020年4月より改正給特法を施行し、教員の勤務時間の上限を定めた指針を策定しました。しかし、同指針は一般的な労働基準法の労働時間とは異なる「在校等時間」と呼ばれる特殊な概念を用いており、抜本的な解決には至っていません。また、私立学校や国立学校は民間企業と同様に労働基準法に基づいて残業に対応しますが、本来であれば支払われるべき残業代が支払われていない学校も少なくなく、公立学校と同様に長時間労働が問題になっています。教員の労働問題を抜本的に解決するためには、「教員数を増やす」「業務量を見直す」というのが当然の帰結ですが、スクールロイヤーをはじめとする外部人材を増やす予算は付けられても、肝心の教員自体を増やす予算はなかなか付きません。業務量も新しい教育政策が打ち出される度に増加する一方であり、ここ数年は新型コロナウイルス

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