学労
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4をしても残業代の算定基礎となる基本給が高いベテラン教員が若手教員よりも残業代をもらえる、といった弊害が生じるかもしれません。また、責任ばかり重くて残業代がもらえなくなる管理職になるよりも、授業準備や部活動で残業代がもらえる教諭のままのほうがよいと思えば、ますます管理職の成り手がいなくなるかもしれません。民間企業ではこうした弊害を適切な労務管理や合理的な賃金体系で防止しようとしますが、教員は各人の仕事の成果が測りづらく、自分のペースで仕事をしたい人が多いため、民間企業で取り入れられている制度を教員に導入したとしても適切に機能するとは限りません。このような点から、実際に教員の労働問題に関して学校から相談を受けている弁護士も、先生たちにとって働きやすいワークルールを考案するために悩んでいます。本書で紹介する内容には、そのような弁護士の悩みが随所に示されています。しかし、実際にはスクールロイヤーが教員の労働問題を取り扱うことはほとんどありません。前述の日本弁護士連合会の意見書も、最近序章 弁護士として教員の働き方を考える3 スクールロイヤーは労働問題にどのように関わるべきか最近は学校の法律問題を扱う弁護士として、「スクールロイヤー」と呼ばれる弁護士が注目されています。スクールロイヤーの定義は明確ではありませんが、日本弁護士連合会が2018年に発表した「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」2では「学校現場で発生する様々な問題に対して、裁判になってから関わるのではなく、むしろトラブルが予測されそうな段階から、学校の相談相手としての立場で、子どもの最善の利益の観点から、教育や福祉、子どもの権利等の視点を取り入れながら継続的に助言する弁護士」をスクールロイヤーと称し、学校設置者である自治体や学校法人の顧問弁護士とは区別した職域を示しています。

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