学労
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5文部科学省が発表した「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き」3においても、スクールロイヤーが担当する業務として教員の労働問題は想定されていません。むしろ、実際に教員の労働問題を専ら担当しているのは学校設置者の顧問弁護士です。では、スクールロイヤーが教員の労働問題を取り扱うことはできないのでしょうか。そもそもスクールロイヤーの導入には教員の負担を軽減する目的があり、言わば業務改善の一環としての意味合いも含まれています。そうであるならば、スクールロイヤーは教員の労働問題に積極的に関わるほうが望ましいかもしれません。もっとも、スクールロイヤーが教員の労働問題に関わることは決して簡単ではありません。前述のとおり、スクールロイヤーは「子どもの最善の利益」のために学校に助言する弁護士です。しかし、教員の働き方改革を進めることが、必ずしも子どもの最善の利益を実現するとは限りません。教員の業務改善を進める上では、これまで当然のように行われてきた子どもたちへの教育サービスを削減せざるを得ないからです。もちろん、教員の働き方改革を進めて、先生たちが働きやすい労働環境のほうが子どもたちの教育にとってもプラスになるという思考は、理念としては正しいのですが、実際上はそう単純ではありません。むしろ、現実には子どもの最善の利益の観点から示したスクールロイヤーの助言が、かえって教員の業務負担を増やしたり、労働時間を長期化させるリスクすらあります。また、教員の労働問題の大半は、管理する立場である学校設置者や管理職と、管理される立場である一般教員との間で生じます。しかし、ほとんどのスクールロイヤーは学校設置者からの依頼を受けて相談に応じるため、労働問題に関わる際には利益相反の問題が生じやすくなります。弁護士にとって利益相反の可能性は重大なリスクですので、スクールロイヤーの立場から教員の労働問題に関わる際には慎重にな序章 弁護士として教員の働き方を考える

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