学労
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4 教員のワークルール研究の問題点教員のワークルールは研究者にとっても関心の高い研究テーマです。6らざるを得ず、積極的に関わることは非常に難しいのが現実です。したがって、スクールロイヤーが教員の労働問題に関わる際には、子どもの最善の利益を実現する方向性と矛盾せず、かつ弁護士としてリスクが回避できる形態を構築する必要があります。しかし、実情として研究成果は必ずしも教員にとって適切なワークルールの構築にはつながっていません。その理由としては、次のような問題点が挙げられます。第一に、教員の労働環境に関するデータは信頼性に乏しい点です。例えば、教員の労働時間は文部科学省・研究者・民間企業のそれぞれが何度も調査していますが、どの調査も労働時間は教員の自己申告であり、(民間企業の業務改善作業で行われるような)客観的に第三者がモニタリングしたものではありません。このため、これらの調査は教員の労働実態とかけ離れた結果になりがちです。労働時間は教員のワークルールに関する実証研究を行う上では極めて重要な変数ですが、このように信頼性に乏しいデータに基づく研究から得られる知見は極めて限定的なものにならざるを得ません。第二に、教員の労働環境を分析・考察するに当たっては、様々な交絡因子を統制することが難しい点です。今日の法律学以外の社会科学では、統計的因果推論と呼ばれる手法が広く用いられていますが、前述のように、教員の仕事は校種・教科・校務・部活動等によって仕事量も働き方も全く異なっており、裁量や個人のペースにも大きく左右されるため、労働時間やストレス等に影響を与える要因を統計的に分析することは容易ではありません。また、裁判所や研究者は教員の仕事の特殊性にしばしば言及しますが、実際のところ日本の教員は社会序章 弁護士として教員の働き方を考える

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