学労
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195弁護士や裁判官が、法律の文言を絶対視して、教育学の知見や教員の経験を軽視することがあるとしたら、他の学問分野や専門家への敬意を欠く態度と言わざるを得ません。自戒を込めて申し上げるのですが、法律家もまた、学校教育のトラブルに関わる以上は教育について最低限の知識を身に付けるべきですし、少なくとも、そのような姿勢を持つべきでしょう。本書でも紹介したように、最近では「学校はブラック職場である」という報道を目にすることが多くなりました。教員の志望者も減少傾向にあり、公立・私立を問わず、小・中・高校は教員不足の時代が続きそうです。本書では、教員の働き方、特に労働時間に関わるQ&Aを多数収録しましたが、教員の労働時間は、地方公共団体が設置する公立学校と、それ以外の学校(国立大学法人、公立大学法人又は学校法人が設置する学校)で適用される法律が異なるため、議論が錯綜する論点の一つです。裁判例の蓄積が少ないことに加え、教育行政は文部科学省、労働行政は厚生労働省と、所管する官庁が異なることもあり、解決への糸口を見いだすことすら難しいこともあります。教員の負担軽減については、文部科学省や各地方公共団体において様々な施策が講じられていますが、今のところ特効薬になりそうなものは見当たりません(先進国の中で最低水準と言われる教育予算を倍増させ、教職員の数も倍にすれば、たちまちホワイト職場に変わると思うのですが…)。弥縫策を講じているうちに学校現場が破綻することがないよう、願うばかりです。本書に掲載されたQ&Aの多くは法律家の観点から執筆されたものですが、教員の働き方の実務において、法律と教育の架け橋を目指したものでもあります。学校をめぐる法的紛争には、唯一の正解がないあ と が き

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