ア開発
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5 アジャイル開発に関する書籍は多数あるが、特に読みやすいものとして平鍋健児=野第1 アジャイル開発の概要るプロダクトの一部をなす機能)を作り、ユーザに見せてフィードバックを得る。こうした短期間での開発とフィードバックの獲得を何度も反復することで、ユーザのニーズを反映した、ユーザにとって本当に価値のあるプロダクトを徐々に作り上げていく5。また、一旦プロダクトをリリースした後も、その後のビジネス環境の変化によって新たに生じたニーズに応じて機能を追加したり、既存の機能を改善したりしながら、プロダクトを継続的に進化させていく。 このようなアジャイル開発の手法は、様々な機能が集まって構成され、部分的な改良により価値が高まるソフトウェアやサービスの開発に向いている。例えば、サブスクリプション型で提供されるサービス(クラウドで提供される業務用アプリケーションや、リリース後も逐次コンテンツが追加されるタイプのスマートフォンアプリ等)では、課金利用者のつなぎ止めと拡大を図るため、バグやセキュリティ上の問題をこまめに修正するとともに、利用者が求める新たな機能やコンテンツを迅速かつ継続的にサービス投入し、魅力を高めていくことが求められるが、こうしたものは継続的な改善を得意とするアジャイル開発に適しているといえる。 なお、継続的により良いアウトプットや開発の在り方を模索するという、アジャイル開発の考え方やアプローチには汎用性があり、ソフトウェア開発のみならず、企業の新製品開発6やマネジメントの手法、政府・企業・個人をステークホルダーとして巻き込んだ社会全体のガバナンスモデル7等についても、アジャイル開発を参考にしたものが提唱されている。中郁次郎=及部敬雄『アジャイル開発とスクラム 第2版』(翔泳社、2021)。6 アジャイル開発の主要なフレームワークであるスクラムは、1986年にHarvard Business Reviewに掲載された、竹内弘高=野中郁次郎「The New New Product Development Game」という論文に由来している。この論文は、当時日本企業において行われていた新製品開発のプロセスを分析したものであり、1980年代の日本企業における新製品開発の手法がアジャイル開発の一つの起源であるといえる。 Hirotaka Takeuchi and Ikujiro Nonaka The New New Product Development Game (Harvard Business Review, 1986) https://hbr.org/1986/01/the-new-new-product-development-game5

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