ア開発
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第3章 アジャイル開発と契約告担当部分の進捗によって影響を受ける旨が確認されていた」こと、ベンダが送付した仕掛品をユーザが途中経過として容認していたこと、ベンダとしてはブラッシュアップフェーズを設け、追加開発の予算を設けた上で、本件ソフトウェアの開発を進める必要がある旨をユーザに伝達していたことから、裁判所は、本件ソフトウェアの納品期限は当初の期日から変更されており、追加開発の予算を設けた上で改めて設定される予定であったと認定し、ベンダによるソフトウェア開発業務の履行遅滞はないと判断した。■コメント 本件では、業務対価固定の請負契約で、ユーザが提示する仕様に従いアジャイル開発を行うことが合意されていた。このような契約を形式的に見れば、ユーザの要求事項の全部を固定価格で開発しなければならず、ベンダにとって極めてリスキーであるが、裁判所は、契約内容を合理的に解釈し、業務の対価が固定であることからすれば、ユーザが一方的に仕様を示したとしても、それだけで仕様が確定するわけではないとした。もっとも、裁判所が常にこうした解釈をしてくれるとは限らないため、ベンダとしては、このような請負契約でアジャイル開発を行うのは避けるべきであろう。 また、裁判所は、履行遅滞の文脈において、アジャイル開発ではユーザ側担当作業の進捗がソフトウェアの完成時期に影響することを認めている。アジャイル開発の場合は、ユーザ側での要求事項の検討・決定状況がスケジュールに直接影響するとの理解を示したものと考えられる。98

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